果てしない奥行きと浮遊感を描いた「現代の琳派」・・「墨龍」(加山 又造 作 1984年)

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.3.31>解説より引用)

 11メートル四方の天井に、23万5000枚の金箔を一面に使用。手本にしたのは、俵屋宗達が描いた「雲龍図屏風」(17世紀)。本画は日蓮宗の総本山である、身延山・久遠寺の本堂に描かれている。

 「通奏低音」のように流れる、日本の美意識がそこにはある。加山又造(1927〜2004)いわく、「日本の美を追求していくと、結局<琳派>に行き着く・・」と。そこには、日本画の伝統的な様式美を、現代的感覚に表現しようとする、「異端の画家」の壮絶な挑戦とその思想が込められているという。

 例えば、海から飛び出さんとする龍に絡まっていく、「波の形」は、尾形光琳が描いた「松島図屏風」を模したといい、龍に生命を吹き込むための技といっていい。

 そもそも、宗派を問わず仏教寺院の本堂などには、なぜ龍が多く描かれるようになっていったのか。それは、古来より仏教を信仰する者を守護する「霊獣」、「守護神の姿」として、龍が用いられてきたからという。

 そして、この大画面に展開するところの圧巻は、なんといっても「墨の美しさ」である。色を超えた色の世界・・・これが「水墨画の真髄」と捉えられる。

(番組を視聴しての私の感想綴り)

 この2018年・夏に、猛暑・酷暑といわれる暑さをしのぎつつ、東京・広尾にある「山種美術館」へ初めて足を運んだ。「水を描く」という企画展を鑑賞したいと思ったためである。

そして、「水」をあらゆる画家がこれまで描いてきたことにより、水の表現に挑んだ画家たちの作品を、一堂に鑑賞できるというのも、楽しみであった。

 本企画展のチラシに使われたメインビジュアルは、千住博 作の「ウォーターホール」と、川端龍子 作の「鳴門」である。

 山種美術館は、特に「日本画の専門美術館」ということもあって、松岡映丘の「山梨の宿のうち 雨宿り」、酒井抱一の「夏秋草図屏風」、横山大観や橋本関雪の「生々流転」などに続き、今回の作品「雲龍」の作者でもある、加山又造の「波濤」なども、鑑賞できた。

 加山又造が、エアブラシなどを駆使して、飛沫を表す取り組みは、以後、千住博の「ウォーターホール」などにも、引き継がれていった。

 加山又造は、龍の浮遊感を二次元で再現しようとした。現代にあっては、3DやVR(Virtual Reality 仮想現実) の登場であり、現実と仮想現実を、人間の脳は区別できない次元にまでの到達が、比較的容易である時代を迎えている。

 われわれは、これから何をどう超えるべきなのか。「美の追求」という人間の無限の挑戦は、あるいはまだ、はじまったばかりなのかもしれない・・・

 写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.3.31>より転載。同視聴者センターより許諾済。  

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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