バウハウス(BAUHAUS)と新しい美学

(「新・巨人たち」番組<テレビ東京 2022.11.12放映>の主な解説より引用)

 「建築の革命」と言っていい。
バウハウスの理念は、科学技術をもとに作る技術と美学で、国籍というものもなく、世界中にそのまま広がった。

 バウハウスの設立者であり、建築家のワルター・グロピウスは語る「共に未来の建築を考え総合芸術たる建築を作り出そう!!」と。
 アメリカでは、フランク・ロイド・ライトの作品「落水荘」(1936年)、フランスではル・コルビュジェの初期作品「サヴォア邸」(1931年)などは、バウハウスの理念そのものを形にしたような代表的な住宅である。

 日本では、山脇 巌が設計した、東京・中野区にある「三岸アトリエ」(1934年) 機能的なものは美しいと、木造建築として手がけ、その後国内に根づかせていった。
 表参道沿いにできた「同潤会アパート」は、中層鉄筋コンクリート造りで、後の集合住宅・団地アパート建築ブームの先駆けとなった。

 廊下をなくし、狭い空間、狭い面積をいかに有効に活かすかという、「プランニングの合理性」は、日本の団地設計の理念にも生かされていった。
 東京・竹橋にできた「パレスサイドビルディング」(林 昌二 設計 1966年) も、バウハウスの影響を受けて建てられたビルである。
 このビルは、新しい日本のモダニズムを生み出したビルであり設計と言っていい。

 建築家・建築史家の藤森照信さんは、「現代の都市のビルディング、普通の建築物、ほとんど全ては、バウハウスに行き着く。

   また、箱で閉じられた空間を破る方法として、フランク・ロイド・ライトは、日本の伝統的な数寄屋や茶室の造り(例: 桂離宮 にある「翠松亭」)を見て、これで行けると考えた」と語る。
 壁がなく大きな窓、仕切りのない部屋の発想は、伝統+最先端の融合と言ってよく、バウハウスで吸収され、世界を巡り、再び日本へやってきた巡り合わせの奇跡。


 今回担当した番組のアート・トラベラー 田辺誠一さんは「バウハウスは近代建築の中に、その思想がベースに埋まっている。そこには、日本の建築様式、考え方、美が深く入り込んでいる、影響を与えていることに、驚きを感じたとともに、嬉しかった」と語った。


(番組を視聴しての私の感想綴り)

 バウハウスは、1919年に建築家ワルター・グロピウスによってドイツのワイマールに設立された芸術学校であった。
 彼が目指したのは、教師と生徒がデザインスタジオやワークショップで、一緒に技術を追求すること、そして「芸術を総合的にとらえる」ことであった。
 絵画の学校、彫刻の学校、建築の学校を持つのではなく、すべての芸術を同じ屋根の下に置き、互いに影響し合えるようにしたいと考えた。
 バウハウスのデザインは、抽象的で幾何学的なものが多く、情緒や感情を排除し、シンプルなデザインを提唱した。
 その美学は、現在に至るまで建築家、デザイナー、芸術家に大きな影響を与え続けている。

 3つの素朴な疑問。
① バウハウスの存在期間は短命なのに、影響力は今後も現代の建築物の基礎にあるものとして無限?
   それにしても、たった14年間ほどの存在であったバウハウスが、なぜその後の「建築の革命」とまで呼ばれるほどの影響力を発揮していったのか。

② バウハウスとカンディンスキーの「総合芸術」追求と相互の影響性はいかに?
 カンディンスキーの生涯の夢は、「総合芸術」の実現であったが、一方で建築のもとに絵画・彫刻・工芸など、諸芸術の統合を目指すバウハウスの理念と、教育・研究の拠点は、彼の夢の追求と符号したと考えられる。
   その後の彼の思想(「抽象=創造」あるいは「抽象=具体」)や作品に、どのような影響を与えていったのか。

③ 22世紀 ポストバウハウス建築の行方は?

    機能主義やモダニズム建築は、20世紀の世界中の建築物を魅力的に席巻していった。ニューヨークの国連ビル、オーストラリア・シドニーのオペラハウスなど、その象徴的ビルは枚挙に暇がない。

   そこで、これから先の22世紀を見越して展望するに、インドやアフリカといった新興国が、やがて世界の主要な経済発展の中心に据える時代。

 また環境に配慮したエコシステムや、サーキュラーエコノミー(循環経済)といった時代に、どんな建物が時代の要請に応える、バウハウスを超える、いわば「ポスト・バウハウス建築」思想の潮流(建築トレンド)となっていくのか。


といった想像力が、自然と働いていった。


写真: 「新・美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2022.11.12>より転載。
同視聴者センターより許諾済。

バウハウスの建物 (ワルター・グロピウス設計 1926年)


「サヴォア邸」(ル・コルビュジェ設計 1931年)



美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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