デザイン的か 絵画的か・・「迎賓館 七宝花鳥図三十額」(濤川惣助 1907年作)

<「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2016.7.30)で、主な解説コメントより引用>

 迎賓館の「花鳥の間」に装飾の一部として用いられている「 七宝花鳥図三十額」(濤川惣助

1907年作)は、花々と鳥たちの美しさを捉えた、無線七宝の代表作品のひとつ。

京都生まれた並河靖之(なみかわ やすゆき)は、「蝶図瓢形花瓶」(1893年<明治26年>頃作

清水三年坂美術館:所蔵)を、「有線七宝」による技法により制作した。

 一方、東京で活動した濤川惣助(なみかわ そうすけ)は、「七宝 富嶽図額」(1893<明治26>

年頃作 東京国立美術館:所蔵)を、「無線七宝」による技法により制作した。

 七宝焼(しっぽうやき)とは、金属工芸の一種で伝統工芸技法のひとつ。金、銀、銅、鉄、青銅などの金属製の下地の上に釉薬(ゆうやく)を乗せたものを、摂氏800度前後の高温で焼成することによって、融けた釉薬による美しい彩色を施すもの。

 紀元前の中近東で技法が生まれ、シルクロードを通って中国に伝わり、更に日本に伝わったというのが通説とされる。日本においては明治時代の一時期に、爆発的に技術が発展し、欧米に盛んに輸出された。特に京都の並河靖之、東京の濤川惣助、尾張の七宝家らの作品が、非常に高い評価を得ている。

 番組では、江戸時代の北斎と広重、西洋ルネッサンスのレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロが、同時代の良きライバルであったのと同様に、西の並河、東の濤川として、美の競演を讃えている。

<私の感想コメント>

 超絶技巧としての金属工芸作品は、これまでも本番組において時々取り上げられてきたが、今回の二人の作品は、有線か無線かで、迎賓館の「花鳥の間」に採用される図柄としての採用選考が行われた。

 デザイン的な美としての「有線七宝」。一方で、絵画的な美としての「無線七宝」どちらが優れているということではなく、いずれも日本が世界に誇る金属工芸技術の最高水準を呈したものとして、世界に誇れる美術作品と感じた。もっと広く世界に発信し紹介されていいのでは。

 この春(2016年)に、生誕300年記念として、東京都美術館で開催された、伊藤若冲の絵画展を鑑賞して間もないにもかかわらず、細密に、緻密に、精緻に、対象を捉えるだけでなく、表現の手法において高い技術を駆使した両氏の素晴らしい日本的美を体現する作品に触れることで、興奮冷めやらぬといった視聴後の感想である。

写真: 「美の巨人たち」放映番組(2016.7.30)より引用 。同視聴者センターより許諾済。

「迎賓館 七宝花鳥図三十額」(濤川惣助 1907年 作)」

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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