Aqua(水)こそArt(アート) 「エステ家別荘」(ピーロ・リゴーリオ作 1580年)

<「美の巨人たち」放映番組(2017.9.2)からの主な解説コメントより引用>

 イタリア一美しい庭園。後期ルネッサンス期の代表的な庭園である、「エステ家別荘」(ヴィッラ・エステ Villa de Este)は、ローマの郊外であり、古都であるティボリにあるエステ家の別邸である。園内には設計者の美意識を反映して、ギリシャ・ローマ時代をモチーフとして、大小約500ほどの噴水が築かれている。

 「ドラゴンの噴水」には、英雄ヘラクレスの彫刻作品が、エステ家の創始者として飾られている。2001年世界遺産登録。230メートル先上部にあるアニエネ川から、水路により水を引き入れ、庭園で使われる噴水の水はすべて、この自然の恵みの水を引き込んでいる。

その水は園内の隅々にまで流れ、「オルガン噴水」では、優雅な音楽まで奏でている。

 ピアニストであるフランツ・リストのピアノ曲集「巡礼の年第3年」には、この庭園をモチーフに作曲された曲が3曲収められており、中でも「エステ荘の噴水」は壮麗に吹き上げる噴水をテーマとした曲として知られている。

<番組を視聴しての私の感想コメント>

 水を引いて制作した庭園と聞いて、日本庭園の天才庭師小川治兵衛が、琵琶湖疎水を京都に引いて創作した五感で感じる「洛水庭園」(1909年)を思い浮かべた。庭と心が溶け合っていく「なごみの庭」ともいえようか。

 リストが、この別荘を1868年に訪れ、以来1885年にわたりここに魅せられ滞在した中で、作曲した「エステ荘の噴水」の譜面の下に刻まれている言葉が印象的である。

「私が与える水は、人の中で泉となり、永遠の命への水が湧き出る」と。

 水は、「生命」そのものであり、「癒し」であり、「ささやき」であり、「恵み」である。水こそがアートであるとすれば、北斎や広重なども水をモチーフとした作品の数々をも想起してしまう。

 人はだれでも、子宮の中の羊水という水の中で、命を育みながらこの世界へ誕生してくることを思えば、「水と人との関係」は切っても切れないほどに、不可欠のものである。

 人は水から生まれ、水に還っていく存在であるとすれば、つねに水を携えて生きていく存在であり、決して無駄にはできない存在でもある。

 さらに、地震の大津波の水にみられるように、時として人の命を奪うほどに襲いかかる水でもあることに思いをいたせば、水と人とは、つねに自然体で謙虚に向き合うことの大切さも学びたい。

写真:「エステ家別荘」テレビ東京放映番組(2017.9.2)より転載。同視聴者センターより許諾済。

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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