芸術家の聖地に建つ白亜の建物「サクレ・クール寺院」(ポール・アバディ設計 1919年)

<「美の巨人たち」番組(2017.3.4)を視聴しての主な感想コメント>

 「サクレ・クール」とは、「聖なる心」という意味。

比類なき建築美のこの寺院は、モンマルトルの丘がある「パリ18区」にある。

   パリの観光名所統計によると、2015年1位ノートルダム寺院 3位ルーブル美術館と比しても劣らない、世界中から観光客が訪れるパリ観光名所・第2位となっている。 

    れっきとしたキリスト教の寺院であるが、イスラム教のムスクを思わせるデザインの建物である。

   この寺院は、「教会=王政」を復活させるノートルダム寺院に見られるような、ゴシック様式による設計ではない。モザイク画、ドーム屋根のある「ビザンティン様式」と、半円形アーチのある「ロマネスク様式」を融合させた、斬新なアイデアにより建てられた建物。公募の際、84の応募作の中から、アバディの作品が選ばれた。

 ただし、アバディは建物の完成をみることなく、この世を去ってしまう。ドーム展望台に登ると、パリを360度見渡せる大パノラマが楽しめる。

 また、トラバーチンという白い石が、建物外壁などに用られていて、平和である「白」をも象徴している。

<番組を視聴しての私の感想コメント>

 歴史を振り返ると、かつてこの地は、普仏戦争などによる戦場の地であったという。

 多くの市民や兵士が犠牲となったため、おびただしい犠牲者の鎮魂の祈りと、将来への平和への希求により、建築がはじまった。40年以上の歳月をかけて建築された建物でもある。

 単なる「観光名所」として、パリ景観を楽しむだけのために訪れる観光客も多いとは思うが、やはりその建物の歴史や経緯を知ることで、「建築に秘められた鎮魂の祈り」を、人ごととすることなく、紛争による犠牲の耐えない現代であっても、どうしたらこうした祈りを、つぎの世代に引き継いでいけるのかを考えるのも大事ではないかと思った。

 また、建築の歴史という視点からも、多くのことが学べる施設である。単なる観光にとどまらずに、風化させてしまってはいけないこと、人ごととしてすませてはいけない事物が沢山あることを改めて認識しつつ、これからの「美術と歴史の旅紀行」にも機会をみつけて赴ければと思う。

写真: 「サクレ・クール寺院 ポール・アバディ作 1919年 」

「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2017.3.4)より転載 同視聴者センターより許諾済。

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

0コメント

  • 1000 / 1000