美しすぎる仏像 国宝「阿修羅像」(興福寺 734年作)

<「美の巨人たち」番組からの主な解説コメントより引用> 

 仏像彫刻の最高峰、日本彫刻史上 最高の美少年ともいわれる「阿修羅像」は、興福寺西金堂(さいこんどう)に釈迦三尊、梵天・帝釈天、四天王、十大弟子像などとともに安置されていた、八部衆のうちの1体である。

 3つの顔と6本の腕をもつ少年のような可憐な像。胴体も腕もとても細く、憂いのある敬虔な表情が脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)の技法で、リアルに表現されている。

 この像の「3つの美しさの秘密」として、①天平の超絶技巧が駆使されていること。②優雅なポーズをしていること。③他の仏像に比しても、柔らかな人間的な表情を浮かべていること。などがあげられる。

 また、3つの顔であるが、「右顔」は、拗ねた子どもの表情を、「左顔」は、眉をひそめて苦しみ悩んでいる表情を、「正面の顔」は大人びた表情を、それぞれ醸し出している。

 阿修羅は、インド神話ではバラモン「軍の神」で、激しい怒りを表すのが一般的であるが、興福寺の阿修羅像には、激しい表情はどこにも見られない。

 これには、母である光明皇后の、幼くして夭折した子ども(基皇子)への想いが込められているとする説がある。その表情や身体スケールも柔らかくて小さく作られているが、これは当時の中国・唐からもたらされた像と考えられ、その表情は静かに自分の心を見つめ、懺悔する姿を表したものとも考えられている。

<番組を視聴しての私の主な感想コメント>

 6本の手には、合掌する両手に加えて、かつては月と太陽のシンボル、弓と矢をそれぞれ持っていたとされており、8頭身の見事なプロポーションは、美しく優しく柔らかく映る像である。

 柔らかくて、優しい表情といえば、飛鳥時代の奇跡の仏像である「国宝 半跏思惟像」(奈良・中宮寺 所蔵 7世紀前半)を想起した。柔らかい微笑み、ゆったりとした姿勢などの表現が、清楚で上品な雰囲気を醸し出していて、阿修羅像の表情と重ねてみると、慈悲のようなオーラが共有されているような印象を持った。

 阿修羅像であるが、興福寺に所蔵されている曼荼羅図から想像するに、昼夜を問わず守り、仏に祈りを捧げるという優しい像が、二重写しに見える。

 かつてインド、中国、朝鮮から様々な仏教文化が伝播されてきたが、日本という島々に届く中で、日本が伝播のエッジとなり、大和の「和」の文化として咀嚼され、溶け込み、さらに昇華されていくような流れを感じてしまう。

 それぞれの文化を単に受け入れるだけでなく、さらに高みをめざして加工し、調和させていく、職人芸ともいえる日本独特の文化創造の力を感じとってしまう・・・

写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2017.10.7)より引用複写

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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