高貴さを讃えた4人のアメリカ大統領の眼差し・・「マウント・ラシュモア・ナショナル・メモリアル」(ガッツォン・ボーグラム 1941年)

<「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2017.2.4) 主な番組からの解説>

前代未聞の巨大彫刻。観たことがある人も多いのでは。この彫刻は、アメリカ大陸 サウスダコタ州 ラピッドシティにある、「マウント・ラシュモア・ナショナル・メモリアル」。

 今や、ここはアメリカの聖地といわれている。作者は、彫刻家 ガッツォン・ボーグラム(1867〜1941) 。彼は24歳でパリに留学。「考える人」で有名な、オーギュスト・ロダンとの出会いにより、写実的でエネルギッシュな作風に大きな影響を受けた。巨大な彫刻に魅せられたボーグラムは、「自由の女神像」を超えるモニュメントを作りたかった。

 ラシュモア山という標高1745メートルの岩山。120メートルの幅に、4人のアメリカ大統領の顔を一人ずつ彫り刻んだ。花崗岩でできているこの山を、彫刻場所として選んだ理由は、主に二つある。

 ①長時間にわたり陽があたり、その顔の表情が様々に変化する点。②硬い硬質の花崗岩の岩山であるため、耐久性に優れ長期にわたり風化しにくい点。

 そして、刻み選ばれた4人の歴代大統領は、左から順に

①アメリカ建国の父 初代大統領 ジョージ・ワシントン②3代 独立宣言の起草者 トーマス・ジェファーソン ③ 26代 パナマ運河建設に尽力 ノーベル平和賞受賞者 セオドア・ルーズベルト ④16代 奴隷制度廃止 エイブラハム・リンカーン の4人である。

 ダイナマイト、空気圧ドリル、ブランコなどを駆使しつつ、断崖絶壁の場所で、必死の覚悟で作業にあたった。12年間をかけて、4人の顔を彫り込んだ苦闘の歴史。作者のボーグラムは、完成を待たずに亡くなってしまう。

<番組を視聴しての私の感想コメント>

 空前絶後の巨大彫刻。このような断崖絶壁の場所に、彫刻を掘ろうという夢の計画を考えること自体、スケールの違いを感じる。

 そして、夢に終わらせずに、実現させてしまう実行力。血の滲むような苦闘の戦いの連続といってよい。

 そして、彫刻の眼差しに生命を吹き込んだ、こだわりの設計と工法技術の卓越さ。

 自然の山を彫り上げた巨大な彫刻。何もなかったラピッドシティを、年間300万人の観光客が訪れる「まちおこし」の拠点として浮かび上がらせた功績。

 まさに、「アメリカン・スピリッツ」はここにある・・・と感じた。

<写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2017.2.4)より引用。同視聴者センターより許諾済>

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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