港街・横浜のみちしるべ (横浜三塔物語 1917〜1934年)

「新・美の巨人たち」(テレビ東京放映番組<2020.8.8> 主な解説より引用)

 横浜三塔を巡る物語 ~横浜三塔物語~

 横浜三塔は、戦争等をくぐり抜け建ち続けてきた。この愛称は、昭和初期に外国船の船乗りたちが、トランプのカードに見立てて呼んだことがその由来と言われ、航海の安全を祈り、これを目印に入港したと言われている。
 三塔とは、横浜税関(クイーン)、神奈川県庁本庁舎(キング)、横浜市記念会館(ジャック)の、3つの塔のある建物を指す。
 今から75年前の1945年5月29日に、横浜大空襲で米軍用機から43万8576個の焼夷弾を浴びて、死者の数も8000名を数えた。瓦礫とかした横浜の街中にあって、この三塔は幸いにも燃えなかった。
 横浜港は、昨年(2019年)で開港160周年を迎えた。三塔を順に見ていくと、


はじめに「QUEEN・クイーン」(昭和9<1934>年竣工)
 横浜税関の建物である。港町の門番であり女王。三塔の中では最も海沿いに面していて、かつ塔の高さでは一番高い塔となっている。スクラッチタイルで囲まれた、柔らかな曲線のイスラム寺院風の、エキゾチックなドームが特徴であり印象的である。


次に、「KING キング」(昭和3<1928>年竣工)

  神奈川県庁本庁舎の建物である。2019年に国の重要文化財に指定された。「港は日本の玄関である」として、設計にあたった小尾嘉郎は、「五重塔」にインスパイヤされ、和を基調とした非常に重厚な空間を創り出した。

 

3つ目に「JACK ジャック」(大正6<1917>年竣工)横浜市開港記念会館の建物である。平成元<1989>年に、国の重要文化財に指定された。三塔の中では最も古いノスタルジックな建物。

 東京駅丸の内駅舎と同じく、辰野式フリークラシック様式で、八角ドーム、四角ドームを擁する赤レンガ建築の最高峰とされている。講堂部分は、現在でも「横浜市中区公会堂」として現役で使用されていて、建築資金は、当時の横浜市民からの寄付で賄われた。


 この三塔は、一度に見ることができる場所は限られている。「①赤レンガパーク」「②日本大通り」「③大さん橋」

 この3つのスポットを1日で巡ると願いが叶うという伝説があり、これが「横浜三塔物語」となった。カップルで巡ると結ばれるという噂もあり、この3つのスポットには「目印」が設けられている。

 


「番組を視聴しての私の感想コメント」

 私自身も、何を隠そう横浜生まれの「浜っ子」である。
 幼少時代に、今の大桟橋であったか、外国から入港していた大型客船を見上げたときの、子どもながらの驚きと、船旅を想うロマンな夢に巡らしたことを、原体験の一つとして今でも、映画のワンシーンのように鮮明に覚えている。 
 そんな私の故郷でもある「横浜」は、大好きな街である。今回登場した横浜の三塔は、まさに港街・横浜のシンボル的存在であり、この辺りを散策しての街並みも、東京とはまた違った空気感もあり、大好きなエリアである。
 3つの建物はいずれも、とりわけライトアップされた夜景シーンが、また格別に美しい。港のみちしるべでもあり誇りでもあり、「心の灯台」と紹介されたのが印象に残った。
 ちなみに、私の父親は「パティシエ」(ケーキ造り職人)であり、若い頃の父親が外国船に乗り込んでいたり、部屋の片隅でギターを片手に弾いている、父親のワンシーンの写真が残されている。

 今回は、「物語」(ストーリー)のある「横浜三塔物語」として紹介された内容であったが、それはそのまま、私自身の「幼少時の物語(ストーリー)」の片鱗が詰まった淡い思い出と、どうしても重なってしまった。
 本来の番組の感想からかなり逸脱した綴りになってしまい恐縮ではあるが、人それぞれの「思い出」は、かように「心の宝」でもあるのだろう。
 私にとって、横浜の街には「強力な磁石」があるようで、時々吸い寄せられるように横浜を訪れたくなり、実際に訪れている。
 今日でも、大きな変貌を遂げている横浜ではあるが、そんな革新的な街並みも、エキゾチックな街並みも、「横浜三塔」が絵画のように、自然体で街並みに調和し溶けあっているのが、また素敵である・・・


写真: 「新・美の巨人たち」(テレビ東京放映番組<2020.8.8>)より転載。同視聴者センターより許諾済。

Queen(クイーン) 横浜税関

KING (キング) 神奈川県庁本庁舎

JACK (ジャック) 横浜市開港記念会館

横浜三塔が同時に見える夜景 (大桟橋ビュースポットより)

横浜港・横浜市中心部全景

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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