銀座がギュッと詰まった建築「GINZA SIX」(谷口 吉生 設計 2017年オープン)

(「新・美の巨人たち」テレビ東京放映番組
今こそアートのチカラを
「GINZA SIX」<2020.7.11> 主な解説より引用)

    銀座6丁目に巨大商業施設「GINZA SIX」がオープンして3年。そこは、まるで「美術館」。構想から完成まで14年の年月を費やしたこの施設は、敷地面積約9,080㎡ 地下2階から6階には約240店舗のお店が入り、7階から13階には、オフィスフロアが同居している。
   設計を担当したのは、ニューヨーク近代美術館(2004年)、東京国立博物館・法隆寺宝物館(1999年)なども手がけた谷口吉生(たにぐち よしお)氏である。
   本施設の特色・テーマとしては、大きく3点をあげることができる。


No.1 「商業施設にアート」
    建物内に入ってまず驚くのは、アートのために贅沢ともいえる余裕の空間を確保されていることである。銀座エリアには、現存する日本最古の画廊「資生堂ギャラリー」をはじめ、約250軒のアートギャラリーが存在しており、「アートが身近にあるまち銀座」を、建物内にも取り入れた点である。
     建物内部は、ふつうの百貨店とはまるで違い、ここは美術館?と勘違いするほど現代アート作品の数々が、ゆとりの空間をもって配置・点在している。

    吉岡徳仁氏の「Prismatic Croud」、新素材研究所(杉本博司氏・榊田倫之氏)によるVIP専用ルーム「Lounge Six」、滝の流れをあしらったチーム・ラボによるデジタルアート空間「Universe of Water Particles on the Living Wall」、鏡に写る自分が作品の主人公(カスタマー)として演出した、船井美佐氏「楽園/境界/肖像画」、パトリック・ブラン氏による「Living Canyon」など。

   この「アート体験」は、まさに「銀座らしさ」のひとつである。


No.2「街並みにあった外観の演出」
    碁盤の目のような銀座の区画エリアにあって、異色の巨大さを誇る本施設の建築をめぐっては、様々な紆余曲折と、地元商店街側との話し合いが重ねられた。
    当初は、200mの超高層ビル建築の案もあったが、最終的には、銀座エリア一体の高さ制限を56mまでと定めた、「銀座ルール」に合わせた施設となった。建物上部は「ひさし」を意識した「統一感」、下層部は「のれん」を意識した「個性の重視」をそれぞれ演出し、これまでの古き良き銀座の街並みと調和させた。


No.3 「ワクワクする内装」
   1階から5階は、「白」カラーを基調とした明るく楽しい雰囲気、6階から上は、「黒」カラーを基調とした落ち着いた雰囲気を、それぞれ演出している。
 そして、内装インテリアを担当したフランス人デザイナーのグエナエル・ニコラ氏は、銀座の路地裏を意識した「ジグザクの通路」、回遊するカスタマーの視線を意識し、あえて「斜めに伸ばした格子」デザインの大胆な採用など、ワクワク感をあちらこちらに演出している。


(番組を視聴しての私の感想綴り)
  「これまでの銀座」が好きな人々は、「これから先 未来の銀座」も、変わってほしくないという意識の人々が多いのではと想像する。
    今回のテーマである巨大商業施設「GINZA SIX」も、地元の商店主らはもとより、来街する多くの人々にとっても、間違いなくそうした想いと強いこだわりがあったに違いない。

    ここでも考えさせられたのは、「旧くても大切にする伝統」と「最先端のトレンドを上手に取り込む革新」の一体性というか、調和というか、

 最新を追い求める「都会っ子」・「江戸っ子」・「東京っ子」の良い意味での「プライド・誇り」と言い換えてもいい。
 アートが好きなカスタマー(ここを訪れるお客さま)にとっても、とても居心地のいい、ゆったりと楽しめる、さらには「自分が主役になれる舞台ステージ」と言ったら、大げさであろうか。
 「ショッピング・買物」が目的だとしても、ここを訪れることで結果として、「感性」の刺激を受ける、「新しい自分」「アートの中の自分」に出会える空間になるのであろうことは、想像にかたくない。

 まさに「センス」が磨かれる、「センス」を学べる、「センス」を自分に取り入れる「空間」、大げさに言えば「個々人のもつ感性を磨きつづける宇宙」そのものなのかもと感じた。

 ARTが、人々の生活を潤し、人生を豊かにする不可欠の宝であるとすれば、その生活とARTは、コロナというウイルスがどんなに世界を侵食しようとも、ある意味で切り離せない存在であろう。

 そうした視点からも、「GINZA SIX」は単なる商業スペースに終わらせないメッセージを、送り続ける存在になるのか、それはまた、ここを日々訪れる主役でありカスタマーの側に課せられた、テーマであるのかもしれない・・・
 
 写真: 「新・美の巨人たち」(テレビ東京放映番組<2020.7.11>)より転載。同視聴者センターより許諾済。

右上: 「GINZA SIX」建物の外観
左上:時々のアーティストらによるアート空間演出
右下:  パトリック・ブラン氏による「Living Canyon」

左下: チーム・ラボによるデジタルアート空間
   「Universe of Water Particles on the Living Wall」

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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