美しき数字に隠された凜としたたたずまい「三十三間堂」(後白河法皇・平清盛 作 1164年)

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.7.7>解説より引用)

放送900回記念 千年の都・京都の名建築シリーズ

三十三間堂。その正式名称は、「国宝 蓮華法院本堂」(1164年 後白河法皇・平清盛 作)

南北125メートル、東西22メートルという、世界最長の宗教建築。 

2018年に国宝指定され、美しさと驚きの両面をもって、壮麗にして堅固な美。人に迫ってくる他に類のない建物である。

 この建物には、「国宝 千手観音坐像」を中心に左右に、500体ずつの「千体千手観音立像」が整然と並んでいる。あわせて、1001体の観音像がある。

 また、毎年成人の日には、敷地内にて弓を引く「大的大会」(通し矢)が開かれる会場として有名である。

 そして、この建築物には、美にまつわる4つの秘密が隠されている。

①「繰り返しの美」千体千手観音立像と、襖と柱の等間隔の配置が、独特のリズム感を与えている。

②「千という無限」千の手と千の眼をもつ仏の存在。

③光の演出 朝日の光など外光の光を、うまく室内空間に取り込んでいる。

④広大な空間 化粧屋根裏の造りにより、より堂内空間を広く確保している。

 また、三十三間堂の「33」という数字には、34本の太い柱とその間を、33の空間が現出し、無限を超えた永遠の浄土を願い、その無限性と永遠性を表現している姿となっている。

 さらには、太い柱、虹梁、版築などの組み合わせと、白銀比(1:1.4142)によるリズミカルな配置と構成が、見事なまでに建物の隅々にまで行き渡っている。

(番組を視聴しての私からの感想綴り)

 中学の修学旅行で、はじめて京都を訪れたときは別として、はじめての「三十三間堂」との出会いは、京都にいた友人を訪ねがてら、自らの意志で京都市内の神社仏閣に足を運び始めた、20代前半の頃と記憶している。

 三十三間堂は、間違いなく圧倒的な驚きと迫力で、自らの身体と頭に「生の歴史」というものが迫ってきた最初の建物体験として、いまでもその時の印象と驚きは、脳裏から消えていない。

 千年という時を経て、いまなお、我々現代人に訴えかけてくる価値というものは、一体なんなのか。後白河法皇や平清盛といった、時の権力者が権勢をふるい、多くの庶民の犠牲のもとに誕生したという側面も、あるいはありはしないかと・・

 一方で、今回こうして堂を巡る経緯や、数字のマジックともいうべき建物全体と観音像にまつわる「特別なしかけ」を、改めて学び知るにつけ、当時の人々の精神的な救済への祈りというものが、半端なものではないことにも気づかされた。

 美を支える建築の知恵が、所狭しとふんだんに盛り込まれているのには、驚嘆せざるを得ない。ここでの観音立像とはまったく違う場面ではあるが、ふと中国・西安(長安)近郊の秦・始皇帝の墓近くで発見された、世界遺産のひとつ「兵馬俑」を思い出した。

 最大規模の1号坑には、長さ230メートル、幅62メートルに、約6,000体の「兵馬俑」が並んでいて、三十三間堂の2倍にあたるそのスケールにも圧倒された。

 番組では、最後にこのような言葉で結んでいるのが印象的であった。

 「美しき数字に隠された凜としたたたずまい、千年の時を超えて・・・」

写真:「 三十三間堂」 内観 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.7.7>より転載。同視聴者センターより許諾済。

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

0コメント

  • 1000 / 1000