木組み回廊建築の浮遊感を現出「雲の上のギャラリー」(隈 研吾 作 2010年 高知県梼原町)

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.4.7>主な解説より引用)

 この建築物は、「森林の町」と呼ばれる高知県梼原町(ゆすはらちょう)にある。「自然素材の建築家」として知られる隈研吾(くま けんご)氏の設計。

 隈氏といえば、2020年東京オリンピックの新国立競技場の設計に携わっていることでも知られている、建築家の一人である。

 細かな木組み工法といった伝統木造のいいところを取り入れた、「日本伝統の技」を遺憾なく発揮している点では、共通の設計コンセプトが垣間見える。

 隈氏が、町内の90%が森林という梼原町につくったのは、断崖の下にあるホテルとその下の温泉施設を結ぶ、渡り廊下にあたる部分の施設。梼原町の木を100%使用したという。

 「大樹のモニュメント」とも称され、この土地にマッチした施設にとことんこだわった。

 設計への着想のひとつとして、日本の三大奇橋のひとつとして取り上げられた、大月市にある「猿橋」にみられる「木組みの技術」があった。

 隈氏いわく、「20世紀はコンクリートという便利な技術で覆われた時代であった。それら今までのもをいったん全部一掃しリセットして、21世紀では、もう一度地方のそれぞれの文化を復活させる時代。真にその土地に、その場所に根付かせられる建築をめざす時代にするべき」として、今回の建築物もその設計思想の体現のひとつとなった。

(番組を視聴しての私の感想綴り)

 一番印象に残ったのは、ユニークな外観の魅力もさることながら、「渡り廊下の滑走路」ともいうべき素敵な「廊下ストリート」である。

 シンメトリーの対称性を基本にしつつ、神社の屋根などでも採用された三角形により、神秘的なスペースを強調し現出させ、そこを歩くとなにかスピリチュアルな体験をも与えてくれそうな、「浮遊感覚」に導かれるという点である。(実際には未体験なので体験したいです)

 隈氏が述べるように、またご本人の設計経歴を振り返りつつも、バブル時代に都内に建てた「M2」のようなコンクリートの塊ともいえる建築物の時代から、もう一度その設計における感性を磨き直しつつ、そこここの地元の資源(風土、空気、土地、材料、ひと、智慧など)を活かしつつ、建築物もそこに生きる人々とともに存在し共生する存在に・・

 これからの時代は、そうした建築物でなければ、真に土地に定着し愛され、親しまれ、そこに住む人々にとっての、「真に価値ある建物」(豪華で美麗なだけということでなく)にはならないのでは・・・そんなことを考えされられた。

 写真: 「雲の上のギャラリー」(隈研吾 設計 2010年) 

    上:  外観(大樹をイメージ)  下: 内観・回廊(まるで飛行場の夜間滑走路のよう)

「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.4.7>より転載。同視聴者センターより許諾済。

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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