20世紀の巨匠 最も有名で多作なアーティスト 「ゲルニカ」(パブロ・ピカソ 1937年作)


(「新・美の巨人たち」テレビ東京放映番組2019.11.16  主な解説より引用)

 パブロ・ピカソ(Pablo Picasso 1881-1973年)は、スペイン南部の都市マラガ生まれ。主にはフランスで精力的に活動した画家・素描家・彫刻家である。

 ジョルジュ・ブラックとともに、キュビスムの創始者でもある。特筆すべきは、生涯におよそ1万3500点の油絵と素描、10万点の版画、3万4000点の挿絵、300点の彫刻と陶器を制作した、20世紀で最も有名かつ多作な美術家であったとされる。(「ギネスブック」より)

 ピカソは作風がめまぐるしく変化した画家であり、それぞれの時期が「◯◯の時代」と呼ばれている。

青の時代(1901年 - 1904年)

ばら色の時代(1904年 - 1906年)

アフリカ彫刻の時代(1906年 - 1908年)

キュビスムの時代(1908年 - 1921年)

新古典主義の時代(1917年 - 1925年)

シュルレアリスム(超現実主義)の時代(1925年 - 1936年)

ゲルニカ、戦争の時代(1937年 - 1945年)

ナチ・ドイツ(実行したのはドイツ空軍のコンドル軍団である)がスペインのゲルニカを爆撃したことを非難する大作「ゲルニカ」や、その習作(「泣く女」など)を描いた。

 今回の放映は、この時代に描かれたピカソの代表作のひとつ、「ゲルニカ」をとりあげた。

戦後の時代(1946年 - 1953年)

晩年の時代(1954年 - 1973年)

ピカソは非常に多作な作家であり、世界中の多くの美術館が、ピカソの作品を保有している。

 ピカソの名を冠する美術館だけでも、まず生まれ育ったスペインでは、バルセロナに1963年「ピカソ美術館 (バルセロナ)」が開館した。2003年には、遺族がピカソの出身地であるスペインのマラガに、「ピカソ美術館 (マラガ)」を開館。フランス政府は、1985年に「国立ピカソ美術館」を開館。この美術館は、一作家の美術館としては世界最大の規模を誇るものである。

 このほか、アンティーブに「ピカソ美術館 (アンティーブ)」、カンヌ近郊のヴァロリスに「ピカソ美術館 (ヴァロリス)」が存在し、パリと合わせてフランスには、合計3つのピカソ美術館が存在する。

 ピカソはまた、以下のような言葉を、作画の時々に残している。

・「誰でも子供のときは芸術家であるが、問題は大人になっても芸術家でいられるかど

 うかである」

・「私は対象を見えるようにではなく、私が見たままに描くのだ」

・   私は「ゲルニカ」と名付ける現在制作中の作品において、スペインを苦痛と死の中

  に沈めてしまったファシズムに対する嫌悪をはっきりと表明する。」(「ゲルニ

  カ」制作時の声明より)

・「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間

  がかかったものだ」


(番組を視聴しての私の感想コメント)

 ピカソという人の存在、そして「ゲルニカ」という絵画の存在を、私が初めて知ったのは、高校時代の「世界史」の授業中であったのを記憶している。

皆さんも、過去の出来事の衝撃的な「原体験」や、ある年齢・ある時期の「一場面」「一瞬間」というのを、なぜか鮮明に記憶に留めていて、なおかつそのことを時々思い出し想起する、といった経験をお持ちではないだろうか。

ただ、当時高校生の私が、「ゲルニカ」という作品から得た印象は、ピカソが絵画に込めた、「戦争への憎悪と怒り」、「市民の日常の暮らしと平和への希求」という、社会担任の先生の説明を思い起こすとき、単に「そんなものなのか」と、軽く受け流して聞いていたにすぎなかったと思うと、いまさらながら悔やまれる・・・

戦争を肌で体験した人が、年々減っていくにつけ、戦争への恐怖心や平和を求めるが故の「戦争に対する憎悪心」が薄れていくのは、やむをやないものと片付けてはならないだろう。

「ゲルニカ」は世紀の大作であるが、これを見た当時の人々には、「ゲルニカ」は難解で、その上、「絵画とは美しいもの」と言う一般的な期待にも合致していなかった。「ゲルニカ」を好意的に取り上げたフランスの新聞も、当時は皆無だったという。

「ゲルニカ」の真の評価は、皮肉なことに、パリ万博以降に開催されたイギリスでの巡回展と、ニューヨークでの展覧会で急速に高まった。

   そして、第二次世界大戦の勃発によって、「ゲルニカ」はその後42年間もニューヨークにとどまった。その後42年間が経過した1981年に、ようやくスペインに里帰りできた。

    21世紀に入り、今日の最先端戦争兵器がどんなものか詳しく知る機会は少ない。あるいはリスク管理・国家機密ということで、一般国民には知ることのできない情報かもしれない。

    ドローンのような無人空中撮影や物資運搬の用途ならいざ知らず、戦争や紛争時の攻撃装置としてすでに実用化されていたり、AI(人工知能)ロボットや高度医薬品なども、人々の健康や身体・介護サポートなどに役立てられるのは望ましいとしても、攻撃用ツールや高度な化学医薬兵器といったものに、悪用・転用されるとすれば、何のための科学技術の進歩なのか・・・と考えさせられる。

 世界の2020年の幕があけた。

   未来予測の某テレビ番組を視聴して感じたこと。それは、もはや人類にとっての脅威は、国同士の「戦争」のみならず、国を問わずに押し寄せる「地球温暖化」であり、それに伴う「異常気象の頻発」「人間への遺伝子操作」「AI(人工知能)とシンギュラリティ問題」など、課題は山積している。

   向こう10年間(2020→2030年)で岐路に立つ判断を誤れば、もはや取り返しのつかない地球全体の形態系破壊に突き進むと予測する、多方面の専門学者の指摘の声が、後を絶たないという・・

 見て見ぬフリをするのは、もはや限界。人類の本当の叡智が試される時代に、我々は遭遇している・・・

 ピカソが存命であれば、なにを感じ、なにを描いただろう。それは、ピカソの問題ではなく、明らかに「いま」を生きている人、一人一人の問題であるだろう。

 悲観的な議論だけでのみ、描くべき空白を埋め尽くすのではなく、明るい挑戦、チャレンジにこそ未来があるとして、歩みを止めないことなのかと考えた・・・


写真: 「ゲルニカ」(「新・美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2019.11.16>より転載。同視聴者センターより許諾済)

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

0コメント

  • 1000 / 1000