圧倒的な美の塊と空間「ミラノ大聖堂」(1386年着工〜1965年完成)

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2019.1. 12>主な解説より引用)

今も鼓動するミラノの魂。ミラノ大聖堂(Duomo di Milano) は、約600年もの歳月をかけて完成された世界最大級の荘厳なゴシック建築であり、都市ミラノの象徴でもある。

 着工当時のミラノ公である、ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティの要請により、 サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の場所に、最初の大理石の石が置かれた。

 その後、宗教改革による中断を経て、約500年後の1813年に、ミラノ公国を征服したナポレオン・ボナパルトの命によりファサードが完成。 さらに19世紀を通じて、尖塔と新しいと交換などの全ての装飾が仕上げられ、1965年に完成した。

 敷地面積12000平方メートル、幅94メートル、奥行き158.5メートル、高さ108.5メートルという壮大な建築物。途方もないも手作りの建設工事。

 精緻な彫刻の数々、40,000人を収容できる美しき祈りの場、55組のステンドグラスの聖なる光、52本の巨大な柱、135本の尖塔、そして外周りだけでも、2245本の彫像が飾られている。尖塔の先には、ひとつひとつに聖人が立っていて一番高い位置には、金のマリア像が輝いている。まさに聖堂の全体そのものが、「芸術品の塊」といっていい。

(番組を視聴しての感想綴り)

 ミラノ大聖堂には、いまだ訪問したことはない。番組でも紹介されていたが、600年という歳月は、日本の歴史で言えば、室町時代から、江戸、昭和を経て、先の東京オリンピックが開かれた1964年の翌年に完成という、まさに途方もない年月を要したことになる。

 建築工期の途方もなさと言えば、5年前に訪問したスペイン・バルセロナに今も建築中の、アントニ・ガウディ設計の「サグラダ・ファミリア」を想い出す。

 こちらは、2026年完成予定とされているが、21世紀に入ってからのIT技術(3D構造解析や3Dシュミレーション検証など)の進歩と導入により、300年とされていた工期が、約その半分の144年の工期で完成することになるという。

 ミラノ大聖堂に至っては、さらにその2倍の工期600年である。これだけの時間と歳月をかけての巨大な建築物は、ほかに見当たらないのではないか。

 「時間のデザイン」という科目を、かつて京都造形芸術大学で学び直した記憶も蘇った。

 平成の時代は、わずかに30年で終わろうとしている。長大な歴史の流れから見れば、これもほんの一瞬、人の瞬きのような歴史の一瞬、瞬間に過ぎないのだろうか。

 ハードというか「形」にして、この世界に、地上に何かを遺す、刻みつけるという営みの壮大さに驚嘆する一方で、「モノ」から「コト」へ、豊かさ(幸福)の尺度が変わりつつある現代にあっては、ソフトである「生の物語・ストーリー」を、一人ひとりがどのように描くのかということも、芸術・アートには問われているのではないか。

 持続可能でない衰亡・滅亡の一途をたどる地球の運命にはするまじと、この年末年始にサピエンス全史、ホモ・デウス(いずれもユバル・ノア・ハラリ氏著)を一読したあとの読後感と重なり、「生の価値とは」を振り返るひとときともなった。

写真: 「ミラノ大聖堂」左「聖堂の内部空間」右「外観の一部(昼と夜)」「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2019.1.12>より転載、同視聴者センターより許諾済。

 

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更)   ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)

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