(「新・美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2020.11.7>主な解説より引用)
黄金の雲間から観えるストリートビュー。高い位置から京都の街を一望した俯瞰図である。ドローンもない時代に、一体どうやって高い位置から眺め描いたのか。そして、そもそもこのような図屏風を、なぜ描いたのか。
絵を観ると、16世紀の京の街に息づく生き様、清水寺をはじめ有名なお寺や神社、御所や武家屋敷、様々な商売を営む人々の暮らしぶりなど、当時の京の街の活況があちらこちらに展開していて、観る者をいつまでも飽きさせない。
「洛中洛外図屏風<上杉本>」(狩野永徳 作 1565年 米沢市上杉博物館蔵)は、1995年に国宝指定されている。
(番組を視聴しての私の感想コメント)
京都を描いた屏風であるのに、どうして中国のように「洛中洛外図」と呼ばれるのか、素朴な疑問を持ち調べてみた。
ダヴィンチの「受胎告知」が20歳の頃の作品。ラファエロの「アテナイの学堂」も26歳の頃の作品。芸術の天才と呼ばれるアーティストは、20代ですでに天賦の才能発揮ということなのか。努力だけのレベルではとうてい到達しえない作品の完成度であると、ため息をついた。
もっと驚いたのは、番組内で試されたドローンによる実験証明である。
「洛中洛外図屏風」を巡っては、当時の政治的な駆け引きや、第13代将軍足利義輝が永徳に描かせた中での、ある種の野望といったものが見え隠れしており、「制作年の正確な時期」「描いた事実と虚実」「描かせた政治的背景と永徳のなぞ」など、今日でも歴史学者の中においては、大論争となっていると聞く。
そのことは、今後の論争に委ねるとして、私自身が特に印象に残った点は、以下の3点(1)~(3)である。
(1)パトロンの存在と権力的な誇示
例えば、それは尾形光琳が描いた「風神雷神図屏風」の裏に、酒井抱一が描いた「夏秋草図屏風」がそうであるように。
(2)狩野永徳による自由闊達な空気
つまりは、二条城に構えるような荘厳な屏風や壁画とは違い、この洛中洛外図にあっては、市井のあらゆる生業の庶民、子どもから、武士、公家を、そして京都特有の祭りや行事の楽しい踊りや振る舞いなど、日本人が古来から受け継いできた「ハケ」と「ケ」を、思う存分に描き、永徳自身が描きながら楽しんでいる空気が、画面からも伝わってくるのである。
(3)洛中洛外図のような絵屏風は、世界に存在しないという驚き
美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty
本ブログは、「美の巨人たち」(テレビ東京 毎週土曜 22:00〜22:30) 放映番組で取り上げられた作品から、視聴後に私の感想コメントを綴り、ここに掲載しているものです。 (2020年4月放映より、番組タイトル名は「新・美の巨人たち」に変更) ブログ管理者 京都芸術大学 芸術教養学科 2018年卒 学芸員課程 2020年修了 瀬田 敏幸 (せた としゆき)
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